Black Hawk Down for FULL METALL PANICK


 

  第二話『ブラックホークダウン』






 総合指揮センターの画面で戦況をモニターしていたテッサ達には、まるでスズメバチの巣を棒で突いたように見えた。戦闘をリアルタイムで見るという行為は実に恐るべき事であり、現場で戦っている隊員たちを見るとテッサは肝が縮む思いだった。

戦場より遥か上空でその映像を送り続けている観測ヘリコプターのカメラは、ソマリ族の群衆がバリケードをつくり、タイヤを燃やして民兵の応援を呼ぶ姿を鮮明に捉えている。数え切れないほどのソマリ族が通路を埋め尽くし、血気盛んに、地上に降りた招かれざる客達を迎え撃とうとしていた。その殆どは一般人だが、武装しており、なかにはまだ年齢が二桁もいっていないような子供までいた。

戦闘が行われている地域の上空には必ず支援用のヘリコプターが待機しているので、彼らにはどこで戦闘が起きているのか一目でわかる。一番人数の多いのは北の集団で、どうやらブラックホークスーパー67と降下したメリッサ・マオ軍曹率いるチョーク4に向かっているようだった。

現場総合指揮官などという肩書きはあれど、自分にできる事と言えば画面で戦況をモニターし、彼らにCSAR、任務指揮ヘリに乗る士官を通して指揮を執り、彼らの無事を祈るだけだった。ただ、状況が正しい流れに流れている間はその指揮さえも必要ない。そういった場合の状況判断は現場の人間に任せられるのである。この場合のテッサの仕事は、常に現場の状況を把握し、2手、3手先を考える事ことだ。もし状況が悪化して非常の事態ともなれば、街の反対側のパキスタン・スタジアムで待機している国連軍を呼び出す。事前に作戦の報告は入れていなかったので、すぐに出られるとは思えなかったが、今のところその必要もなさそうだった。負傷者が一名出た事を除けば作戦は滞りなく進んでいる。地上でブラックバーン上等兵が落下したとの報告と同時に、テッサの耳にはデルタの強襲部隊が目標の人物を捕らえたという報告が入ってきていた。後はただ、彼らが無事に帰ってくるのを待つばかりだ。





「捕虜の搬入まで何分かかる!?」

車輌部隊の指揮を務めるユニフォーム64、ダナン・アマサート中尉が激しい銃撃音の中で、建物から続々と出てくる捕虜達を連れているデルタ達の指揮官、キロ64、キャステロ中尉の耳元で大声で叫んだ。

「5分です!」

アマサートにはよく聞こえなかったので反対の耳を差し出す。

「5分です!」

今度は聞こえた。

「もっと急がせろ!」

五分もここにとどまるのかと思うと冷や汗が出る。

アマサートが自分のハンヴィーに戻ろうとした時、担架を担いだデルタ隊員二人と、チョーク4のムーア。少し遅れて銃を構えたグライムズ特技下士官がこちらに向かってきて、直列した二代目のハンヴィーの前に担架を下ろした。

「コイツはどうした?」

「負傷者です!ヘリから墜落しました!」

「よし!ハンヴィーに乗せろ!」

アマサートは徐々にソマリ族が増えてきているのをひしと感じていた。デルタとレインジャーの隊員合わせて8名ほどが応戦していたが、いつまでもここでとどまるのは危険だ。只でさえ白昼堂々と敵の、それも一番民兵が多いところに自分達は居るのだ。

「アマサート中尉!」

先頭のハンヴィー、アマサートの車輌の運転手を務めているヤン・ギュンジュ伍長が車のドアを開け、声を張り上げた。彼の運転技術は大したもので、アマサートも、他の隊員たちも信頼を置いている。

「どうした!?」

「コイツを早いとこつれて帰らないと、このままでは危険です」

ヤンが親指で先ほど運び込まれた負傷者、レインジャー隊員のトッド・ブラックバーン上等兵を指し示す。

「よし解った。キャステロ中尉!」

「はい!」

「負傷者を乗せたハンヴィー三台を基地に帰したいが、護衛が足りない」

「俺が行こう!俺の隊が確実に送り届ける!」

会話に割り込んできたのはデルタの強襲部隊の班長、フート・ギブソン軍曹。彼は先日のアイディード派重要人物拉致作戦の潜入工作員として作戦を成功に導いた優秀な男だ。

「ロメオ64!こちらユニフォーム64!負傷者を乗せたハンヴィーを3台帰す」

「ユニフォーム64、こちらロメオ64、了解した」

指揮通信網による通信に応じたのは、上空を飛行しているCSARブラックホークに乗り、任務指揮に当たっている地上部隊担当のアンドレイ・S・カリーニン少佐。

「よしヤン、帰還許可が出た!先に行け!」

「了解しました」

程なくハンヴィー三台は、負傷者と目標人物、捕虜の一部をのせて発進した。アマサートは三台のハンヴィーがホールワディックロードに進み出でるのを確認した後、捕虜の搬入状況を見るためトラックに駆け寄った。流石はデルタと言うべきか、キャステロ中尉から5分と報告は受けていたものの、実際の所2、3分で済みそうだ。

−シュッ−シュッ−キュン−キャン−

段々と銃弾がハンヴィーのボディを叩くようになってきた。ソマリ族の銃撃が激しくなってきた証拠である。後ろでは残ったデルタと車輌部隊のレインジャーが必死に応戦を続けている。皆の気持ちは同じ、早くこんな朽ち果てた地獄から抜け出して空港の倉庫を改装した兵舎の一角を陣取り、冷えたビールでも飲みながら衛星放送のバラエティー番組を見たい。

「中尉」

丁度キャステロ率いるデルタが捕虜の搬入を終えようとしていた時だった。先ほどブラックバーンを護送してきたチョーク4のグライムズ特技仕官がアマサートの肩を叩いた。

「ヘリが被弾するのが見えたような気がするんですが」




 宗介はブラックホーク墜落の一部始終を見た。機長たちの声も自分のウォーキートーキー無線を通じて耳には届いていた。

 マオに指示されて通りの一角を守っていた時だ。未だ止む気配の無い銃撃に宗介達が苦戦していると、不意にヘリのローターブレードの爆音が辺りに響いた。大した時間をおかず、膨大な砂塵を引き連れて、黒鉄の巨鳥が宗介達の上空数十メートルのところに舞い降りてきた。ホヴァリングを開始した巨鳥ブラックホークは、副操縦士席に設置されたミニガンを咆哮させると旋回をはじめ、マオと宗介が居る場所と通りを挟んで反対方向の建物屋上へと掃射。

『こちらスーパー61、ジュリエット25、メリッサ軍曹、大丈夫か?』

ウォーキートーキーから無線の会話が聞こえてきた

『スーパー61、こちらジュリエット25、ウォルコット、助かったわ』

ミニガンの掃射が終わり、空薬莢の雨が治まった。宗介が顔を上げると、今弾丸の荒らしが過ぎ去った建物の屋上に向け、ソマリ族の人影が数人上っていくのが見えた。そのうち二人は丸筒に弾頭がくっついた様なRPGを担いでおり、残りのソマリ族がこちらに銃を向けて乱射している。やつらがこちらに銃を向け射撃している間に、RPGをもった民兵達を屋上へ上がらせ、上空でホヴァリングしているブラックホークを狙おうというのだろう。

「マオ!5時の方向にRPGを持った男が見える!」

宗介が叫ぶ

「61!ウォルコット!5時の方向にRPGを持った民兵が二人行った!」

マオが民兵に応射しながらウォーキートーキーに声を張り上げた。宗介がヘリの機首からみて5時方向・・・建物の屋上でRPGを構える民兵にM16の銃口を向け、発砲。宗介達レインジャーや、デルタはソマリ族の民兵のような馬鹿な連射はしない。ソマリ族の使用している主力武器はAK−47、カラシニコフと呼ばれるアサルトライフルだ。ロシア製のこの武器はRPGと同様安価で、入手するのが比較的容易い。さらに連射もでき、弾薬交換方法がマガジン交換ということもあって、多くのテロリストや軍備が行き届いていない諸外国などが使用していた。

宗介愛用のM16アサルトライフルにも勿論連射機能はついているが、連射とはアサルトライフルの中で最も効率の悪い射撃方法だと宗介は心得ていた。アサルトライフルにはネルソンのM60汎用機関銃やウォデルのSAW(分隊自動火器)のように大量の弾薬が装填できる訳でもなく、1マガジン内に収まっているその弾数はせいぜい30発程度と、ハンドガンの弾数の二倍ほどしかないのだ。また、連射はその性質上バレルの著しい劣化やボディの破損などにも繋がる。そういった面でもやはりリスクが大きい。アサルトライフルで最も効率の良い射撃方法はフルオートのまま少し指をかけて直離す、三点射ないし五点射、所謂バースト射撃である。単発射となるとこれは逆にバレルの寿命は長いし弾薬の消費も少ない。ある意味経済的といえるが、相手に与えるダメージや恐怖は少なくなる。いくら銃の寿命や弾薬を節約した所で自分が死んでは元も子もない。相手にそれなりの損害を与えつつ、同時に寿命や弾薬を節約する、それがバースト射撃であり、これは決して単発射と連射の中間に位置する‘中途半端’ではなく単発射と連射の長所を併せ持った‘効果的’な射撃なのである。

−タタタン−タタタン−

小刻みなリコイルとマズルファイアが周りの黄土色にとけこんだ。RPGを構えた二人の民兵のうち一人が後方へ大きく仰け反る。続きマオの射撃でRPGの弾頭の入ったナップサックを抱えた男が悶え、倒れた。

二人の射撃が残った一人に集中する。キーンと甲高いRPGの発射音を聞くが早いか男が倒れた。

「スーパー61!5時方向にRPG!!」

マオが叫ぶ

『クリフ!5時方向にRPGだ!回避しろ!RPG!』

声の主はブラックホークスーパー61の副操縦士レイ・ダウディ

RPGの弾頭が、真っ白な尾を引きスーパー61に向かって飛んでいく。直後、銃撃よりさらに大きい、雷鳴のような爆発音が辺りに響いた。

『61、被弾した!繰り返す。スーパー61、被弾した!』

宗介だけでなく、マオやクルツ、ギャランタイン、ウォデルやネルソン、チョーク4だけでなく、他のチョーク隊員も皆見たはずだ。無誘導のRPGがブラックホークのテイルローターに直撃するところを。

テイルローターが閃光に包まれ、爆散。続いて咳き込むようなゲホゲホという音がした。ヘリは尚も前進していたが、やがて機体を震わせてきりもみを始めた。最初はゆっくり、そして次第に速く。

「おい、宗介、ブラックホークが墜落するぞ」

後ろを守っていたクルツが宗介の肩を叩き、きりもみを始めたスーパー61を指差す。

『ウォルコット!だめだ、テイルが持っていかれた、機体を戻さないと!』

『解ってる。くそ、レイ、回転が治まらない』

『何かにつかまれ』

『ロメオ64、こちらスーパー61、墜落する、繰り返す、61、墜落する』




 JOCの大画面には、ブラックホークが墜落する瞬間が生々しく中継されていた。スーパー61がチョーク4の支援に向かった時だ。61はホヴァリングしながら副操縦士席に設置されたミニガンで建物の屋上にいる10名前後のソマリ族を掃射し、旋回して周囲の警戒を行っていた。丁度先の建物がヘリの右斜め後方に位置した時、内部にまだ隠れていたのか、数人のソマリ族が露出した階段をのぼり、3階あたりからチョーク4に反撃を始めた。うち2人はRPGらしき円筒形のものを担いでおり、そいつらは屋上に上がってヘリを狙っているようだった。

ヘリとRPGとの距離は直線にして約40メートルほど、本来ならなんら問題ないような距離だが、今は状況が違う、ホヴァリング中なのだ。一週間前に墜落したQRF(急速対応部隊)のブラックホークもRPGにやられた。機長と副操縦士は、即死で、二名の機長付もソマリ族の群衆に手足を切断され、死亡した。テッサはその時思わずJOCを飛び出し、隣の草地で激しく嘔吐したのを覚えている。そういえば、あの時入り口に置いてあった弾薬ケースにすねをぶつけてできた痣があった。思い出したら疼いてきた。

ヘリが狙われている間にチョーク4がソマリ族を始末していったが、最後の一人を撃つ時には既に手遅れだった。運悪くその一人はRPGを担いでおり、自分が倒れる前に引き金を引いて弾頭を放っていた。

RPGの弾頭が白い尾をひき一直線にブラックホークめがけて飛んでいく。テッサが描いた最も悪い展開に事態は進展してしまった。テイルローターにRPGの直撃を受けてバランスが失われたスーパー61は、きりもみをしながら数ブロック先の広場に墜落した。

『ブラックホークダウン、ブラックホークダウン』

CSARのカリーニン少佐の声が、虚しく室内に響き渡る。

テッサは三つ編みにしたアッシュブロンドの髪の先を、ぎゅっと口元に押し付けた

「CSAR、チョーク班を行かせて生存者を調べてください。それとスーパー64とQRFを向かわせて地上部隊到着までの周辺の確保及び負傷者の救出を行うよう。速やかに」

テッサがテキパキと指示をだす。指揮官としての素質を問われるのは常日頃の平凡な訓練ではなく、実戦での、それもこのような緊急の場合だ。その点では今のテッサはまさに相応しいと言えるのではないか。

「我々は主導権を失いましたね・・・・・・」

今朝にタイヤの煙があがった時点でもっと慎重になるべきだったかもしれない。




ローターの規則正しい重低音が響き、ヘッドフォンからは緊急連絡が聞こえていた。

スーパー64に乗るマイク・デュラント准尉は、同僚のクリフ・ウォルコット准尉が無線でこう皆に伝えるのを聞いた。

−61墜落する−

ウォルコットに慌てた様子は無く、むしろ落ち着きを払っていた。

しかしそれはごく当然の事だ。デュラント達ブラックホークのパイロットは勿論墜落を想定した訓練も行う。それも何十回もする。

テイルローターを持っていかれたときの対処法も心得ているし、どうすれば墜落する状況にあって安全に地上に着けるか、というような事も日々の訓練で培ってきた。被弾して慌てるようなヤツは自分の同僚には居ないと言い切れる。

デュラントのスーパー64はモガディシオの北に広がる砂漠の上を規則正しく旋回していた。右に大きくバンクをかけるたびに、太陽に真っ直ぐ飛び込んでいくような気がする。

ウォルコットのヘリが墜落した後、直ちに起こる事が三つある事をデュラントは知っていた。

まず地上部隊が墜落地点へ向けて移動を開始する。CSARのブラックホークが救護班と狙撃兵を呼び出す。

自分はこれから墜落地点の上空に移動し、救護ヘリが来るまで掩護をするよう指示を受けるはずだ。

デュラントは尚も旋回しながらその連絡を待った。こういった多数のヘリコプターが参加する作戦の際に軍規に反すれば、敵よりも大きな危険をもたらす結果となる。自分の任務の最も厄介な部分は狩猟させたとデュラントは思っていた。地上部隊15名を降下させるときは電柱と電線に注意しつつ見通しの聞かない土煙の中を屋根ぐらいの高さまで降りていかなければならない。更に隊員全員がロープ降下して地上に降り立つまで窓越しに茶色の渦目を凝らし、正しい位置を常に維持する必要がある。どんな作戦でもこのときが一番パイロットにとってキツイ。他のヘリが予定時刻を間違えたり予定進路をそれたりしないことを祈りながらじっと耐えるしかないからだ。

こういった複雑な任務はバレエのふりつけよろしく細部まで入念に決められているが、それでいて危険極まりない。

自分はチョーク1を滞り無く降下させた。後は何もかも楽勝のはずだ。

『スーパー64、こちらロメオ64、地上部隊が敵の抵抗に遭っている。救護ヘリと彼らが到着するまで墜落地点上空へ移動し、周辺を確保しろ』

デュラントの予想通り、CSARからの指示がきた。

「地上部隊のと救護へリの到着までどれくらいかかる?」

『解らん、不明だ。できるだけ急がせる』

「64、了解」

交信の終了と同時に、デュラントのヘリ、ブラックホークスーパー64は、色褪せた一国の首都めがけてエンジンの出力を上げた。




 マオは、自分のウォーキートーキーから聞こえてくる、マッカラン大尉からの緊急連絡を、銃撃の中で聞いていた。

『25、ジュリエット25、こちら64!チョーク4が最も墜落地点に近いどうぞ』

「こちら25、墜落地点は見えませんどうぞ」

『25、その数ブロック先だ、行けばわかる。防御を残し墜落地点まで徒歩で移動しろ!生存者を調べ、周辺を確保しろ!どうぞ』

「了解、クソ!宗介!」

こちらに発砲してきたソマリ族の男に向け三度親指に力をこめる。

−タン−タン−タン−

M16から放たれた5.56mmライフル弾三発は男の胴体やや左肩の所に命中し、コーラの缶を撃った時の様に血が吹き出した。倒れて動けなくなったのを確認し、マオと宗介はネルソンの所に走った。

「ギャランタイン!クルツ!ジョイス!ネルソン、ウォデルを呼べ」

それぞれの所を守っていた隊員を集合させるべく、銃声に負けない大声を張り上げた。

「皆聞け、ブラックホークが墜落した。ネルソンとウォデルはここに残って角を確保、ハンヴィーと共に撤収。ギャランタイン、シュミット、宗介、クルツ、ジョイス、ユーレクは私と来い。いいわね!?」

「どうして俺が残るんです?」

「頼りにしてるからよ。いくぞ!」

「頼られたか無ぇよ」

冗談半分にネルソンが言う。

マオ以下、レンジャーの隊員はSAW銃手のツォンブリーとM60銃手ネルソンを残し、指示を受けた方向の通路へと駆け出してった。この状況では、分隊支援火器を所持した隊員を多く連れて行くことは得策ではない。火力の増加は嬉しい限りだが、その分部隊の機動性を犠牲にしてしまうことになる。逆に拠点などの防御に際しては、殆ど移動する必要が無く、火力の強い彼らは有利に戦うことができる。だが今は早急に墜落地点へと移動し、生存者と周辺の確保をしなければならないのだ。幸い現在のチョーク4の負傷者はブラックバーンだけだ。そのブラックバーンにしても、先ほど車輌部隊に搬送され、今はデッドウェイト(動けない重荷)になる者すら居ない。極めて快調に移動する事ができる。

『25、すぐ横を並行して敵の群衆が進んでいる。それと次の角で民兵の車輌が待ち伏せしている。気をつけろ』

ウォーキートーキーから聞こえてきたのはカリーニン少佐の声だ。

「壁によれ」

先頭のマオが押さえつけるようなハンドアクションを示した。丁度1ブロック程きただろうか、隣の通路と繋がっているH路が見えた。CSARからの報告によるとこの角に民兵の車輌が居るとの事だ。

マオが拳を握り、右肩の上の辺りまで上げた。止まれの合図だ。

「俺が行って様子を見る」

宗介が建物の壁に背をつけたまま、そっと角の向こうを覗いた。次の瞬間

−ダダダダ、ダダダダダダ−

車輌の荷台に設置された機関銃の低い射撃音が響いた。

宗介は慌てて首を引っ込める。直後に先ほどまで宗介の頭があた位置の壁がバラバラと崩れ落ちた。

−ヒュー−

「あぁ、クソ!RPGだ!RPG!!」

−ドーン−

宗介が声を張り上げると同時に、無誘導のロケット弾が角の壁にぶつかり、爆発。宗介達の頭上に瓦礫の雨を降らせた。

「手榴弾!」

列の2番目に居たマオがすぐさま指示を出す。応じた更に後ろの2人、ギャランタインとクルツが自分のハーネスから手榴弾を外し、ピンを抜く。

「クソ」

−ドン−

ギャランタインの投げた手榴弾は惜しくも民兵の車輌の少し手前に落ち、爆発した。

「まかせろ」

−ドン−

続けてクルツが投擲、今度は見事に車輌の荷台に落ちた。

「よし、行け!行け!行け!」

CSARからの報告で、すぐ隣を並行して敵の群衆が進んでいるのは知らされている。ここはH路になっており、隣の通路と交差するようになっている。車輌の殲滅に少し時間をかけてしまったので、早急にこの場を離れるべきだ。隊員全員が走り出す。

墜落地点までは一直線だったが、民兵が廃車や土嚢で設けたバリケードが多々あるだけで、墜落地点が見えるどころか、視界すら確保できないような状況だ。幸いというべきか、前にも後ろにも敵の姿は確認されていない。迅速かつ慎重に、移動は極めて順調だ。

 1ブロックほど行っただろうか、宗介は妙な違和感を体中に感じていた。どうやらマオやクルツ、他の隊員も感じているようだ。

「おい、宗介、何か様子が変じゃないか?」

後ろを走っていたクルツが宗介の肩を叩く。

「あぁ、様子がおかし」

宗介の言葉は突然の銃声によって遮られた。通路両脇の民家二階の窓が突然開き、民兵が銃を乱射してきたのである。勿論予測していなかった訳ではなかったが、少し意表を突かれた。まるでそれを合図とするかのごとく、周りから民兵が現れた。前も後ろも敵とバリケードと白い壁しか見えない。

目標まではまだ6ブロックあった。ヘリのローター音もしない。



管理人のコメント

 SANAKIさんから速いペースで「BHD for FMP」の続編を頂きました。今回も緊迫しています。

>戦闘をリアルタイムで見るという行為は実に恐るべき事であり、現場で戦っている隊員たちを見るとテッサは肝が縮む思いだった。

 戦争がゲーム感覚になる、などと言われる中で、テッサのこうした姿勢は実に立派なものです。

>タイヤを燃やして民兵の応援を呼ぶ姿を鮮明に捉えている。

 なるほど、狼煙だったわけですね。

>「ヘリが被弾するのが見えたような気がするんですが」

 ついにブラックホークの墜ちる瞬間が来ます。

>「おい、宗介、ブラックホークが墜落するぞ」

 緊迫した状況のはずなんですが、クルツが言うとなんだかのんきな感じです(笑)。

>目標まではまだ6ブロックあった。ヘリのローター音もしない。

 短くて、そして長い生還までの道のり。果たして、宗介たちは無事にブラックホーク救出を成し遂げて帰れるのでしょうか?


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